この記事のポイントは、「人がいないから倒産する」だけではなく、「人を確保するために賃上げした結果、利益が残らず倒産する」ケースが増えているということです。
2026年度上半期(4~9月)では、「人手不足」関連倒産が240件で過去最多。そのうち「人件費高騰」を原因とするものが130件、前年同期比75.6%増となっています。株式会社東京商工リサーチ
どういう構造なのか
例えば小さな建設会社を考えると、
① 人手不足
↓
従業員が辞める・求人を出しても来ない
↓
② 給料を上げる
↓
月給を3万円上げる
↓
会社の人件費が大幅増加
↓
③ しかし商品・サービスの価格を十分上げられない
↓
売上はそれほど増えない
↓
④ 利益が減る
↓
資金繰りが悪化
↓
⑤ 倒産
という流れです。
特に問題なのは、「賃上げしたら人が来る」とは限らないことです。
帝国データバンクによると、2026年1~7月には、従業員の退職が直接・間接的な要因になった倒産が83件。前年同期の74件から増えています。待遇改善ができないことで中心人物が辞め、仕事を受けられなくなるケースも出ています。TDB
「人がいないから倒産」と「賃上げ倒産」は実はつながっています
ここが非常に重要です。
人手不足 → 賃上げ競争 → 人件費上昇 → 価格転嫁できない → 利益減少 → 倒産
という一本の鎖になっています。
さらに2026年上半期には、仕入れ価格などを価格転嫁できずに倒産した「物価高倒産」も556件あり、そのうち人件費が要因となったものが145件で、過去最多でした。TDB
つまり、単純に
「給料を上げれば日本経済が良くなる」
という話でもありません。
中小企業の場合、
賃金を上げるための原資をどう作るか
が非常に重要です。
では、なぜ大企業は賃上げできて中小企業は苦しいのか?
かなり大きいのが価格決定力の違いです。
例えば、
大企業
「原材料費が10%上がったので、製品価格を10%上げます」
が比較的可能でも、
下請け中小企業
「人件費と材料費が上がったので、価格を10%上げたいです」
↓
発注側
「価格は据え置きでお願いします」
となれば、中小企業は
売上は同じなのに人件費だけ増える
という状態になります。
実際、2026年版中小企業白書についての説明でも、中小企業は大企業より労働分配率が高く、すでに約8割近い水準にあるため、賃上げには「稼ぐ力」の強化が必要だとされています。RIETI
だから「賃上げ倒産」は少し皮肉な現象です
企業側からすると、
「給料を上げないと人が辞める」
しかし、
「給料を上げると会社が赤字になる」
という二重苦になっています。
特に資本金1,000万円未満の小規模企業が影響を受けやすく、2026年度上半期の人手不足倒産240件のうち159件、**66.2%**を占めています。株式会社東京商工リサーチ
なので、このニュースは単純に
「日本は人手不足だから会社が潰れている」
という話ではなく、
「人手不足+賃金上昇+物価上昇+価格転嫁できない中小企業」という複数の問題が重なっている
と見るのが適切です。
そしてこれは、以前話していた**「節約すると貧困ループになるのでは?」**という話ともかなりつながっています。企業が賃上げできない → 労働者の所得が増えない → 消費が弱い → 企業の売上が増えない → さらに賃上げできない、という循環が起こる可能性があります。
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