その言葉の意味は、こういうことです。
日本を直接攻撃しなくても、世界の海の首根っこ2本を絞めるだけで、日本の基幹産業である自動車が止まる という恐るべき連鎖が、今まさに起きています。
1. 何が起きているか - 350%の正体
あなたが見た「最大350%」という数字は誇張ではありません。
- 2026年9月のデータで、アジア発・米国西岸向けは7,960ドル/FEU、東岸向けは11,259ドル/FEUで、2月末(ホルムズ封鎖前)比で323.6%・324.7%上昇しています
- DHLのレポートでも世界のコンテナ運賃は前年比143%上昇、ピーク時比でも36%高いとされています
原因は日本への直接攻撃ではなく、遠くの2つの海峡です。
- 紅海・バブ・エル・マンデブ海峡:フーシ派の攻撃でスエズ運河が使えない → アフリカ喜望峰を迂回 → 航海日数が2週間延びる
- ホルムズ海峡:2026年2月28日の米イスラエルによるイラン攻撃以降、事実上の封鎖状態 → 原油タンカーだけでなく全船の戦争保険料が跳ね上がる。サウジ原油の輸送費は封鎖前比10倍という試算もあります
- パナマ運河:水不足で通航枠削減 → 米国東岸向けも回れない
船が消えたわけではなく、「同じ船が同じ期間に運べる量が減っている」 状態です。世界の港湾で約390万TEUが滞留し、2022年のパンデミック時の混雑に匹敵すると言われています。
2. なぜ日本車と無関係ではないのか
自動車は2つの意味で直撃を受けます。
① 完成車を運ぶ「自動車船」のコスト増
日本郵船は決算でこう説明しています。「自動車事業はスエズ運河回避に伴う喜望峰ルートへの迂回航行やホルムズ海峡封鎖の長期化により、運航コストの増加や港湾混雑の影響が見込まれ、通期予想を▲30億円下方修正しました」
船会社は運賃上昇で儲かっているように見えますが、自動車輸送部門だけはコスト増で赤字要因です。
② 部品を運ぶ「コンテナ」のコスト増
日本車は海外生産でも部品の多くを日本から送っています。コンテナ1個が3倍になれば、1台あたり数万円のコスト増になります。
さらに追い打ちが米国の外国建造船入港料案です。7000台積み自動車船で試算すると、1セント案で1600万円、25セント案では約4億円の追加コストになるという試算も出ています。
3. 今後の影響 - 3つの連鎖
1. 車両価格への転嫁は避けられない
業界団体はすでに「原材料費および輸送費の高騰による車両価格の上昇」を新車販売減の要因に挙げています。軽自動車は好調ですが、登録車(ホンダ、日産、マツダなど)は低迷が続いています。350%の運賃は最終的に数万〜十数万円の値上げとして消費者に届きます。
2. 「作る場所」の再編が加速
運べないなら、運ばなくていい場所で作るしかない。トヨタもホンダも、北米で売る車は北米で、欧州で売る車は欧州で完結させる「地産地消」モデルへの移行が加速します。日本からの輸出台数は構造的に減ります。
3. 日本の物価と保険への波及
この問題は車だけではありません。Noteの分析にあるように「日本の物価も為替も、いま中東の海路1本で決まっている」状態です。海上保険料の上昇は損保会社の収益になりますが、電力・ガス・化学など輸入資源を使う全産業のコスト増になります。
結論:
日本へのミサイルも、大地震も必要なかった。世界の物流のボトルネックであるスエズとホルムズという2つの海峡を押さえられただけで、日本の屋台骨である自動車産業の利益は削られ、国内の物価は上がり、海運株だけが上がるという歪な連鎖が起きている。これが「恐るべき連鎖」の意味です。
今後、日本郵船自身が前提としているように「ホルムズ封鎖が9月末まで、スエズ迂回が2026年度通年継続」すれば、この高コストは少なくとも来春まで続きます。
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