日本メーカーは長年、
ガソリン車 → ハイブリッド車 → 燃費・耐久性・信頼性
という分野で非常に強かったです。
ところが中国ではEVの普及が猛烈に進み、2024年には中国の新車販売の約半分が電動車になりました。さらに2025年には約55%まで上昇しています。
つまり、
日本メーカーが最も得意だった「高性能なエンジン+ハイブリッド」という競争軸から、
「バッテリー+ソフトウェア+低価格」という競争軸に変わった
わけです。
① 中国メーカーが「安くて高機能」な車を作れるようになった
ここが非常に大きいです。
中国メーカーはEVに集中したことで、
- バッテリー
- モーター
- インバーター
- 車載コンピューター
- ディスプレイ
- ADAS
- ソフトウェア
などを急速に内製化・低コスト化しました。
中国は2024年時点で世界のEV生産の70%以上を占めています。
しかも中国国内ではEVメーカー同士の競争が非常に激しく、
「新型車を次々に出す」
「装備を大量に載せる」
「価格を下げる」
という競争になっています。
日本メーカーからすると、これはかなり厳しい。
② 「日本車=安くて丈夫」という強みが薄れてきた
昔の東南アジアでは、
日本車は高すぎない
壊れにくい
燃費がいい
部品がどこでも手に入る
という圧倒的なブランド力がありました。
ところが中国メーカーが、
「日本車より安いのに装備が多い」
という車を出してきた。
例えば、
- 大型ディスプレイ
- 360°カメラ
- ADAS
- 電動シート
- 音声操作
- 高性能なインフォテインメント
- EV/PHEV
などを大量に搭載してきます。
そのため、消費者からすると
「日本車じゃないと困る理由」が以前より小さくなった
ということです。
③ 中国メーカーが東南アジアに工場を作り始めた
これも非常に重要です。
中国メーカーは単純に中国から輸出しているだけではありません。
タイ、インドネシア、マレーシアなどに進出し、現地生産まで始めています。
IEAによると、東南アジアには中国メーカーの海外EV・内燃機関車工場の生産能力がすでに約100万台規模あり、中国メーカーの海外生産拠点の半分以上が東南アジアにあります。
つまり、
日本メーカーのホームグラウンドだった東南アジアに、中国メーカーが工場ごと入ってきた
わけです。
④ 中国メーカーは「EVだけ」ではなくPHEVでも強くなった
ここは最近特に重要です。
以前なら、
「中国車はEVだから、充電インフラのない国では売れない」
という弱点がありました。
ところが現在は、
PHEV・レンジエクステンダー
が急速に増えています。
つまり、
電気で走れる
↓
バッテリーがなくなったらガソリン
↓
充電インフラが少なくても使える
という車です。
これによって中国メーカーは新興国でも売りやすくなっています。
⑤ 日本メーカーは「ハイブリッドが強すぎた」という皮肉もある
これは非常に面白いところです。
トヨタなどはハイブリッド技術で圧倒的に成功しました。
そのため、
「EVはまだ早い。ハイブリッドで十分」
という戦略を取りやすかった。
これは短期的には合理的でした。
実際、EV市場が予想ほど一気に全面EV化しなかった地域では、ハイブリッドが非常に強い。
しかし中国では、
EV市場そのものが巨大化してしまった。
IEAによれば、中国では2024年にEV販売が前年比約40%増加し、世界のEV販売に占める中国の割合は約3分の2になりました。
ここで日本メーカーと中国メーカーの経験値に大きな差がつきました。
⑥ 「自動車」がスマホのようになってきた
これが実は一番重要だと思います。
昔の自動車は、
エンジン
↓
トランスミッション
↓
シャシー
↓
ボディ
が核心でした。
だから、
トヨタ
ホンダ
日産
VW
GM
などの伝統的メーカーが強かった。
ところがEVでは、
バッテリー
+モーター
+半導体
+ソフトウェア
の比重が急激に大きくなります。
すると、
「100年間エンジンを作ってきた会社」
であることの優位性が相対的に小さくなります。
逆に、
バッテリー・半導体・ソフトウェアに強い企業
が自動車市場に入りやすくなった。
⑦ 中国メーカーは「新興国向け」にものすごく相性がいい
ここも日本メーカーにとって痛いところです。
新興国では、
「ブランド」より「価格+装備」
が重要になる場合があります。
例えば、
日本車 300万円
中国車 220万円
中国車のほうが装備が多い
となれば、中国車を選ぶ人が増えます。
そして一度シェアを取ると、
販売店
↓
整備工場
↓
部品供給
↓
中古車市場
↓
ブランド認知
まで形成されます。
これは非常に強い。
そして、質問の画像がまさにそれを表しています
画像では日本メーカーが、
- 中国 −8.8ポイント
- インドネシア −6.1ポイント
- タイ −12ポイント
- シンガポール −18ポイント
- マレーシア −4.9ポイント
となっています。
一方、中国メーカーの線が多くの国で上昇しています。
これは単純な
「日本車が売れなくなった」
という話ではなく、
中国メーカーが新しい競争軸を作り、その競争軸に日本メーカーが後から追いついている
という構図を見るべきだと思います。
ただし「日本車はもう終わり」ではありません
ここはかなり重要です。
日本メーカーには依然として、
- ハイブリッド技術
- 品質管理
- 生産技術
- 部品サプライチェーン
- ブランド
- 販売網
- 信頼性
- 商用車
- ピックアップトラック
- 新興国での販売網
という非常に強い資産があります。
また、中国のEVメーカー自身も現在は海外展開を猛烈に進めていますが、関税・現地生産・地政学などの問題があります。IEAも、中国メーカーの海外進出が新興国で加速する一方、現地生産の拡大によって競争がさらに激しくなるとしています。
なので今後は、
「日本車 vs 中国車」
というより、
従来型自動車メーカー
日本・欧州・米国
VS
EV・ソフトウェア型自動車メーカー
中国・米国など
という競争に変わっていく可能性が高いです。
そして個人的には、今回のグラフで一番危険なのは中国市場そのものより、タイ・インドネシア・マレーシアなど「日本メーカーが圧倒的に強かった地域」でシェアが落ちていることだと思います。
ここを中国メーカーに取られると、単なる新車販売の減少ではなく、将来的な部品・整備・中古車市場まで含めた日本メーカーのエコシステムが縮小する可能性があります。


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