「女性が社会進出すれば働く人が増えるのでGDPが2倍になる」という説明は、かなり単純化された議論です。
女性の就業率が上昇したこと自体は事実ですが、労働者数が2倍になればGDPも2倍になる、という比例関係は成立しません。
GDPは大まかには、
GDP ≒ 働く人の数 × 1人あたりの生産額
だからです。
例えば、
- 男性100人 × 500万円 = 500億円
- 女性100人 × 300万円 = 300億円
なら、労働者数は100人→200人で2倍でも、GDPは500億円→800億円で1.6倍です。
さらに日本では、女性の就業増加と同時に、
- 少子高齢化による労働人口減少
- 非正規雇用の増加
- パートタイム就業
- 長時間労働
- 生産性の伸び
- 家事・育児など市場外の労働
- 産業構造の変化
なども起きています。
したがって、
「女性の社会進出は進んだのに、GDPが2倍にならなかった」
という観察自体はできますが、そこから
「女性の社会進出がGDPを増やさなかった」
と結論することもできません。
むしろ正確には、**「女性の労働参加が増えればGDPを押し上げる効果はあるが、その効果は労働者数の増加率とGDPの増加率が1対1になるほど単純ではない」**ということです。
その感覚には一部かなり重要なポイントがあります。ただ、「日本のGDPが増えなかった」は、どの期間・名目か実質かで結論が変わります。
例えば日本では、女性の就業率は大きく上昇しています。OECDによると、女性の雇用率は2012年の60.7%から2022年には72.4%まで上昇しました。2024年5月には73.7%まで上がっています。
一方で、実質GDPの伸びは非常に低いです。つまり、
女性の労働参加が大きく増えた
↓
日本全体の労働力も下支えされた
↓
それでも実質GDPが「働く女性が増えた割合」に比例して大きく増えたわけではない
というのは事実です。
ここが「GDP2倍」の議論の問題です
仮に、
男性労働者 3,800万人 女性労働者 1,000万人 ↓ 女性の就業増加 ↓ 女性労働者 2,000万人
となっても、
労働者が1,000万人増えた=GDPがそのまま1,000万人分増える
とはなりません。
なぜなら、追加された労働者が、
- フルタイムなのか
- パートなのか
- どれくらいの時間働くのか
- どれだけ付加価値を生み出す仕事なのか
- 既存の労働者の代替なのか
- 新しい需要を生み出しているのか
によって、GDPへの寄与が全く違うからです。
実際、OECDは日本で女性の雇用増加のかなりの部分が非正規雇用によって生じてきたことを指摘しています。
そして日本では「女性が働き始めた」だけではありません
同じ時期に、
少子高齢化
が進みました。
つまり、
女性の就業増加 + 高齢者の就業増加 ↓ 労働力を増やす方向 一方で 生産年齢人口減少 ↓ 労働力を減らす方向
ということが同時に起きています。
OECDも、日本では高齢者の就業増加が生産年齢人口の減少を補ってきたと説明しています。
なので、ユーザーさんの疑問を正確に言い換えると
「女性の社会進出によって労働参加は大きく増えたのに、なぜ日本の実質GDPはそれに比例して増えなかったのか?」
という問いになります。
これはかなりまともな経済学上の疑問です。
そして答えは、「女性の社会進出が無意味だった」ではなく、「労働者数を増やせばGDPが比例して増える」という前提そのものが間違っていた、というのが重要です。
さらに一歩進めると、
女性が増えたことでGDPが増えたか?
だけではなく、
「女性が働くことで、家事・育児など家庭内で無償だった活動が市場サービスに置き換わった部分はどれくらいあるのか?」
という問題もあります。
GDPは市場で取引されたサービスを測るので、同じ料理でも、家庭で無償で作っていたものを飲食店でお金を払って食べるようになるとGDPは増えますが、家庭で作っていたままならGDPには基本的に計上されません。
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