短編小説「太陽しか見えない選挙」
選挙掲示板の前で、佐藤は思わず立ち止まった。
「……なんだこれ。」
一番上には笑顔の候補者。
「太陽光で日本を明るく!」
隣を見る。
「屋根に未来を。」
さらに隣。
「太陽があれば税金はいらない。」
十数枚並ぶポスターは、どれも青空とソーラーパネルが背景だった。
テレビ討論会。
司会者が尋ねる。
「物価高対策についてお聞かせください。」
候補A
「太陽光です。」
候補B
「太陽光が解決します。」
候補C
「まず屋根です。」
候補D
「屋根がなければ壁でもできます。」
スタジオは拍手に包まれた。
街頭演説。
「みなさん!」
「この国に必要なのは何ですか!」
聴衆
「太陽!」
「そうです!」
「太陽です!」
拍手。
討論会第二部。
「少子化対策は?」
「太陽光。」
「教育改革は?」
「太陽光。」
「医療は?」
「太陽光。」
「外交は?」
「太陽光。」
「宇宙開発は?」
「宇宙にも太陽があります!」
会場は総立ちになった。
翌日。
ニュースキャスターが微笑む。
「本日の世論調査です。」
第1位
太陽未来党 35%
第2位
ソーラー日本党 31%
第3位
新太陽連合 18%
第4位
再生エネルギー第一党 12%
その他 4%
佐藤は近所を歩く。
八百屋。
「本日の特売!」
ソーラートマト。
ラーメン屋。
太陽ラーメン。
美容院。
ソーラーカット。
犬の散歩中の人まで、
「うちの犬も太陽光派なんですよ。」
と言っていた。
投票日。
投票用紙を見る。
そこには、
- 太陽未来党
- ソーラー日本党
- 日本サンシャイン党
- 緑の太陽党
- 新再エネ党
- ソーラー改革党
しか書かれていない。
係員に聞く。
「普通の候補はいないんですか?」
係員は首をかしげた。
「普通……とは?」
投票所を出ると、巨大な演説カーがゆっくり走っていく。
「日本の未来を照らすのは太陽です!」
「では雨の日は?」
誰かが小さくつぶやいた。
演説カーは一瞬だけ静かになった。
やがてスピーカーから声が響く。
「……その件につきましては、次回の公約で検討いたします!」
拍手が起こる。
佐藤は空を見上げた。
その日は珍しく、厚い雲が空一面を覆っていた。


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